萌木の村 村民かわら版

八ヶ岳・清里高原「萌木の村」のスタッフが綴る季節ごとの村の表情や、個性あふれる各店舗のあれこれです。
<< ゴールデンウィーク初日の表情 | TOP | モエギザクラ満開! >>

マンスリー上次さん 5月号

 人の生き方は時代と場所によって、考える基本は同じであっても表現方法は違ってきます。私はこの時代、この清里でしてきた事が正しかったのだろうか?実はここ数年で私の価値観は相当自分の中ではっきりしてきたように思えます。その結果、自分がしてきた事の間違いにも気づく事になってしまいました。これからの自分の仕事は、その間違いを正しい答えへと書き直していく事だと思っています。
先日もポール・ラッシュ記念館に行ってきたら、若かりし頃のポール先生が若者達に囲まれ、また美人の女性に肩に手を回してもらっている写真に出会いました。それぞれの写真にポール先生の笑顔が。仕事には厳しく、いつでも新しいチャレンジをし、若者達に夢を与え、感動を与え続けたその結果の"満面の笑顔"、最高ですね。
ポール先生は「何を目指し、何をすべきか」という事を言い続けてきたのに、その事を40年もの間、私達は忘れてきてしまったような気がします。分かっているつもりでいたのですが、本質から逃げていたのだと思います。何故かと言うと、ポール先生の答えは「人々の為に、自分には厳しく前へ進み続ける事」だからです。
経済成長が前へ進む事と勘違いし、知的にも感性的にも、自分に厳しく自分磨きする事を怠ってきてしまいました。清里の昨今の厳しい経済環境の中で、前へ進むのではなく、後ろへ下がって生きてきてしまいました。"私の初心は何だったのか?"その時には意識はしていなくても、ポール先生の心が分かっていたのに、歳とともに自分自身を映す鏡はだいぶ曇ってきていました。
 そんな自分に気がついた私は、今年ホテルの改装をしました。3年前にも手を入れ、その結果もまだ出ていない時だけに、そこに新たな設備投資をする事に賛否はありましたが、一人のスタッフの想いと私の目指す方向が一致した事で、前へ進むことが出来ました。
新しくなったホテルのバーの壁に、一枚の写真があります。ポール先生がサントリーの角のオンザロックを飲んでいる写真です。晩年お医者さんからアルコールを止められている先生のところへ行くと、私に「グラス、グラス」とせがむ先生。勿論私は隠れてサントリー角瓶のオンザロックを一杯持っていきます。あの時の美味しそうに飲む先生の事が、昨日の事のように思い出されます。
またオルゴール館「ホール・オブ・ホールズ」は開館当時の賑わいはなく、残念なことに清里のもう一つの代表的な博物館の「北澤美術館」(アール・ヌーヴォー、アール・デコのガラス)も今年3月で閉まる事となりました。私は、ずっとこのままでは続けられないと数年前から悩んでおりました。
そんな時、二人のピアニストと出会い、一台一台のオルゴールに再び命が吹き込まれました。この形態は、世界でも初めてだと思います。オルゴールの事、曲の事、時代の事の解説、そしてオルゴールの演奏と素敵なピアノの演奏。どんなに食材が良くても、料理人の腕が良くなければ感動の料理にはなりません。ホール・オブ・ホールズはオルゴールという素材を素敵なあピアニストという料理人によって三ツ星レストランの作品を作り始めました。
 私のしている事は、まだまだ中途半端な事ばかりですが、一つ一つ質を上げ、日本一のビール、野外バレエ、世界のどこにも無い萌木の村の素材一つ一つを生かして、『ザ・萌木の村』という作品を作るために、それぞれの食材の仕込みをしていきます。
この時代、この清里でしか出来ない物を求めて・・・。

【お知らせ】
・5月14日に清里を出発して26日まで、『ポール・ラッシュ・ドリーム・プロジェクト2012』で東北に行ってきます。
 http://www.moeginomura.co.jp/PRDP/index.html
・6月22日 柔道家としても人間としても世界の金メダルの山下泰裕さんと六本木ヒルズで対談&パーティーを計画しています。

【お願い】
・皆様のお手元にバカラやラリックといったかっこいい素敵なグラスが眠っているようでしたら、リニューアルしたハット・ウォールデンのバーに寄付して下さい。お願いいたします。
上次さんの気持ち
- | -