萌木の村 村民かわら版

八ヶ岳・清里高原「萌木の村」のスタッフが綴る季節ごとの村の表情や、個性あふれる各店舗のあれこれです。
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マンスリー上次さん 7月号

 清里フィールドバレエの準備が始まっています。毎年毎年繰り返し、準備すること23回目。39才の時に始めた私も63才、「あっ」という間の23年間。この23年間で、私にとって大事な多くの人達が亡くなっていきました。
何故こんな時に「死」について書くかというと、生と死は全ての人に与えられた権利であり、どう死んでいくかという事が問われるという話を、先日私にとってとても大きな師と慕う人と尊敬する友人と長い時間話し合ったからです。86才、64才、63才、誰も自分の残り時間は分かりません。野に咲く草花も木々も、春に芽吹き秋には散っていきます。私達3人に共通していたのは、死後は木の葉のごとく、静かに自然に帰りたい・・・という事でした。だから生かされている時は一日、一時間、一分を大事にし、愉快でありたい。人には迷惑をかけたくない。生きている間に友と居る時間をたくさん作りたい、などなどでした。
帰って来て、一人になって考えました。私にとって今、愉快な事とは何だ?今回そして昨年と二度にわたって行って来た東北の被災地での「ポール・ラッシュ・ドリーム・プロジェクト」は、私にも仲間にも、そして観て聴いてくださった方々にとっても充実した時間でした。私にとっては大きな宝物の一つとなる時間でした。そしてこれから始まる『清里フィールドバレエ』23回目の舞台は、私にとっても一緒にやってきた仲間たちにとっても、23回積み重ねて来た思い出の上に乗っている出来事なのです。
しかし、私にはとても重い事であっても、皆にそれを求めてはいけないのだと思うのです。過去の苦労話の上にではなく、今回一回、初めて観る人達にも感動してもらう舞台を作る、またその事に関わり、その緊張感が私には一つの「今、生きている事の愉快な事」だと思うのです。その為に、自分の仕事としての萌木の村があるような気がするのです。
そして今回はわくわくするのです。私は若い人達が努力して努力して、このフィールドバレエの舞台で主役が誕生した時、やたらと嬉しいのです!吉本泰久さんが主役を舞った時、吉本真由美さんが主役になった時、逸見智彦さんが、橋本直美さんが、松村里沙さんが、最近では染谷野委君が、土方一生君が、山田美友さんが。皆、日本のバレエ界の財産です!そして今回、佐々木万璃子さんが17才でデビューする事となり、その話を耳にした瞬間からわくわくしているのです。若者が飛び立つ、その節目の大事な時に、同じ空気を共有できるという事が、どうも私にとっては最高の部類に入る"愉快な事"のようです。
17才の女の子が、並みいるスターダンサー達の中でど真ん中で踊る、そのプレッシャーたるや私達の想像をはるかに超えるものだと思います。ダンサー、バレリーナ達は仲間であり互いにライバルです。それぞれ一人一人が心の葛藤を乗り越えて、舞台に立った瞬間から与えられた役になりきって、一つの作品の為に皆がその責任を果たします。私には、どうもそんな時が、『私の宝物』なのだと思います。

 今私がやっている事は、自分が見る事の出来ない未来の夢の為の基礎作り、その一歩でありたいと思うのです。こんな気持ちを持ちながら、見えないゴールに向かいたいと思っています。最近では、自分が小さな人間で良かった、そしてそんな自分だからこそ、みんなが助けてくれるんだと思えるのです。そしてそれに甘えてしまう自分、きっと【死】というゴールまで、そんな自分のままなのでしょう。
上次さんの気持ち
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