萌木の村 村民かわら版

八ヶ岳・清里高原「萌木の村」のスタッフが綴る季節ごとの村の表情や、個性あふれる各店舗のあれこれです。
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マンスリー上次さん 1月号

joji2015.png2014年が疾風のごとく過ぎ去りました。

2月は記録的な大雪に見舞われ、約1ヶ月間雪に閉じ込められました。報道の方でさえ清里に足を踏み入れられず、私達の孤立状態がどこにも伝えられないような事態でした。その後各地で起きる災害で皆さんが経験していることが、自分たちのことのように身近に感じられるようになりました。

夏の清里フィールドバレエは順調にスタート、25年目にしてやっと収支のバランスがとれると、心の中で安堵感を抱くや否や、公演中に大雨に降られること2回、最後の二日間も台風の影響で、終わってみたら今年も厳しい収支状況を更新してしまいました。しかしフィールドバレエは目に見えない財産を与えてくれています。清里に住む人達には大きな誇りが生まれています。小さな子供達には鋭い感受性が身に付いてきています。私はこの五感で感じ取る力がとっても必要な時代だと考えています。感じ取った物事を理論武装して、更に哲学的に磨きあげていくことが大事だと思います。

さて、2015年は私達は大きく飛躍して実を結ぶことができると期待しています。ポール・スミザーさんと続けている庭づくりは益々充実していくでしょう。きっと全国からスミザーさんの庭を見にお客様がいらっしゃるでしょう。ロックのビールはアジアNO1になり、スタッフはもっと勉強したいと張り切っています。春には本場ドイツに研修旅行に行き、世界一を目指します。バーテンダーの久保田は「ウィスキーエキスパート」の検定に合格し、更なるステップ「ウィスキープロフェッショナル」の検定にチャレンジします。フィールドバレエは益々力が入ってきました。清里にしかない、ここでしか見られない舞台を作り上げます。

今の私の頭の中は夢のことばかりです。しかも遠くのおぼろげな夢ではなく、現実味を帯びた夢です。26回目の清里フィールドバレエはもちろん、来年初のイベント、ウィスキーフェスティバルin清里、私のカントリーフェスタ、自動演奏楽器と音楽家がコラボレーションしたコンサート等、ここでしかできないイベントを開催していきます。早く春が来てほしい!大きく膨らんだつぼみが春には一斉に咲き出しそうです。どんな草花が芽をだし鮮やかに咲き誇ってくれるのか、すべてが楽しみです。

2014年大変お世話になりました。ありがとうございました。2015年も私の夢にどうぞお付き合いください。新年もよろしくお願いいたします。
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 12月号

  皆さん、12月1日(月)午後10:00からNHK総合テレビ「プロフェッショナル 仕事の流儀 大事なものは足元にある~ポール・スミザー~」という番組を是非見て下さい。イギリス人ガーデンデザイナー ポール・スミザーさんの庭づくりの特集番組です。私がここ数年言い続けていることがわかっていただけると思います。私達は今日も作業を続けています。八ヶ岳の開拓地から石を運び出し、萌木の村の自然園を作り上げています。
 環境が良くなるとすべてが変わって来るような気がします。若いスタッフ達が夢を持つようになり、行動的になり、私にいろいろなことを訴えてくるようになりました。先日、アジアでNo.1になったタッチダウンビールを作っている醸造の松岡が「来年3月に本場ドイツに行かせてほしい、世界一のビールを作りたい」というのです。もちろんOKです。バーテンダーの久保田はウィスキーの本場スコットランドの空気を吸って来たことで大きく成長しました。先頃「ウィスキーエキスパート」の資格に合格いたしました。一緒に渡英した若手・三上は競馬のサラブレットがパドックに入ったような状態で、今にも走り出しそうな勢いで、見ているだけで楽しくなります。どうも私の役割は若者の夢をサポートする役割に変わってきたように思います。イノベーションということはこのようなことを言うんだなと実感しています。
 萌木の村は、他のどこにもないもの、見たり聞いたりしたことがないことにチャレンジしていきたいと思っています。そんなことが私は大好きなんです。12月はオルゴール館のクリスマスコンサートが実施されます。そのプログラムは世界で初めての企画です。ピアノとマリンバと自動演奏楽器のコラボレーションです。これは本当にすごいですよ。私はリハーサルを見ていますが、これは感動ものです。そして冬の清里でよく目にする自然木のトナカイですが、すでに25年くらい前から作り続けています。今では東京でも見かけると思いますよ。見た方がフェイスブックやブログで知らせてくれます。私達はこれからも“ここだけ”“この時だけ”効率が悪くともコツコツと、規格品ではなく、より自然に近い物を丁寧に作り上げていこうと思います。
 今年最後の「マンスリー上次さん」になりますので、ご挨拶させていただきます。本当に充実した1年でした。皆様に支えられてチャレンジすることを許してもらえた1年でした。そして、もう少し未来のための基礎作りをさせて下さい。これからもよろしく見守って下さい。2015年は清里フィールドバレエをはじめとして、新しい感動を一緒に作っていきたいと思います。
 ありがとうございました。
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 10月号(続編)

 私の今やっている事はウイスキー作りに似ています。ウィスキーは蒸留して樽で寝かせ、5年、10年、20年、長いものでは50年も樽の中で熟成させます。今日作っている物は自分たちで飲むことのできない物もあります。現在ウィスキーとして世に出ている物は、我々の先輩方が20年30年前に未来の為に作ったものなのです。今萌木の村が取り組んでいるガーデンは、20年、50年、いや100年後、本当にこの地に馴染んだ美しい庭になると思います。次の世代の人たちがこの景観をどう生かしてくれているか、とっても楽しみです。その時の為に、今手を抜かないでしっかりとした仕事をしておきたいのです。その点、私の友人で萌木の村環境部の輿水章一さんは、私が願う以上の仕事を常にしてくれるのです。私はいつもポール・スミザーさんが描くデザイン以上の出来栄えだと思っています。発想・作業・仕上げ・維持管理・成長、一年ごとに質を上げていき、未来の宝物にしたいと思います。50年後、100年後のことを考えるとわくわくします。今は時間と経済的な負担が大きく、その見返りはほとんどありませんが、未来のための「基礎作り」とはそういうものだと思うのです。

 私はドイツのケルン城を初めて見た時、700年もかけて完成させたという話を聞き、計画を立てた人たちは何が楽しくて仕事をしていたのだとうか、設計をした人は自分の生きている時はただただ基礎を作る作業をするだけ、そんな考え方がなぜできるのだろうと不思議に思いましたが、最近、その人たちの気持ちが分かるようになってきました。700年後に完成する物がイメージできている先人たちにとって、その為の第一歩はとてつもない"ときめき"なのだと確信できるようになりました。皆さんにも、今進化している萌木の村の姿を見てときめいてもらえるよう、これからも私の想いを伝えていきます。

 ポール先生が言った言葉『一流であれ』。いつの日か萌木の村は“一流を目指す”のではなく、“一流が普通”になっていることを願います。私はまだまだ生みの苦しみを何回も何回も味わう事になると思います。そして現実と理想のギャップの中で皆様をがっかりさせる事もあると思います。「舩木上次が言っている事と萌木の村がやっている事は違う」と、叱られる事もたくさんあると思います。それでも私は、夢を追い続ける事を決意しました。それは、与えられた人生が一度しか無いからです。

 今萌木の村は、私と一緒に夢を追い求める、3年後5年後にリーダーになれる人財を求む。私は思う。萌木の村は感動したいと思う人にとっては宝の山だと。与えられるのではなく、自ら奪い取れ。
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 10月号

  私は本当に幸せ者です。素晴らしい仲間に恵まれております。
先日、私どものブラウマイスターの中村、松岡、二人のビール職人の造ったビール「プレミアム ロック ボック」がWBA(World Beer Awards)でアジアのベストビールになりました。快挙です!国内のコンクールでは今までに何回も日本一になっているのですが、世界的な品評会に初めて出品して見事に受賞、本当にすごい事をやってくれました。
 私はご存知のようにお酒を飲めないのにビールを作っております。そして今はホテルにBARも始めました。前回の号外でウイスキーの事を少し書きましたが、日本ではもう販売していない終売品のウイスキーを集めました。その数500本ほど。ニッカのオールドボトルも相当入手しました。NHKの朝ドラでニッカウィスキーの竹鶴政孝さん、リタさんがモデルになる番組が放送されるなどという事は知る由もありませんでした。世界的なウイスキーブーム、そして今回の朝ドラ、見事に私にとっては追い風です。ウィスキーの専門誌「ウィスキーワールド」の8月号で、リゾートホテルのバーの特集で大きく取り上げていただいたり、ハット・ウォールデンが「婦人画報」で取り上げていただいたり、「八ヶ岳デイズ」ではポール・スミザーさんのガーデンと私の今進めている"八ヶ岳アルコール文化発信基地構想"が記事になったり、ホール・オブ・ホールズの音楽家とオルゴールの共演も少しずつ認められ、新しい魅力を発進し始めました。本当に皆さんが応援してくださり、萌木の村は夢がいっぱいです。ここ3年間で少しずつ蓄えてきた小さなつぼみがようやく小さな花として咲き始めました。しかし今私はスタッフとともに手綱を締めなおそうとしています。記事を見て訪れてくださるお客様の期待を裏切ってはならないからです。しっかり勉強して、その期待に応えようと努力しております。
 萌木の村には「世界一」とか「世界に一つ」あるいは「日本一」とか「日本に一つしかない」という物がいっぱいあります。世界一は、オルゴール館の『リモネール1900』、『モーツァルト・バレルオルガン』、世界一のオルガンビルダー『脇田直紀』、世界の野外バレエ公演『清里フィールドバレエ』。日本一は、日本一美味しい『タッチダウンビール』、日本でここだけの『八ヶ岳ナチュラルガーデン』、日本一質の高いウイスキーを収集したホテルのバー『パーチ』、オルゴール館ホール・オブ・ホールズをオープンした時から作り始めた『イヤープレート』は日本では最初のものです。そして世界一、日本一素敵な『萌木の村のお客様』です。
 私は「それらの物をしっかりお客様に伝えるに相応しい人になろう」と毎日言っております。私たちは、持っているもの、やっていることに負けないよう、自分磨きに励んでいきます。



※ただいまロック前にて、新たなガーデンの造成工事中です。ご利用の皆様には何かとご不便をおかけしますが、何卒ご了承下さい。140930.jpg
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 9月号

 私は今、不安に思うことがあります。       ホテルを改装し、レストラン・BARをリニューアルオープンさせ、ポール スミザーさんと一緒にガーデニングに励み、村内の環境が整備された中で、フィールドバレエのクオリティーアップ、ビールの品質向上等、ここ数年、スタッフ共々努力を重ね、一歩づつ前へ進んでまいりました。そのことが、急に認められ、多くのテレビ、ラジオ、新聞、雑誌に取り上げられ萌木の村の認知度が異常に上がっています。
本来ならば喜ぶべきことなのですが、今の実力以上の評価に戸惑っています。 私は、真の実力をつけ、この時代を乗り切り、未来に続けていきたいと思っています。
私はかつて、清里がアンアン・ノンノなどの雑誌によって急速にブームになり、そして急激に衰退していったことを知っているので、沢山のメディアに取り上げられ、告知され、有名になっていくことに、浮かれてはいられないのです。
私が、バーテンダーと共にBARを造った時の夢は、いつかウイスキーとBARのバイブル的な雑誌「ウイスキーワールド」に取り上げられたい! ということでした。
それが実現しました。 なんと、サントリーチーフブレンダー 輿水精一氏とスコッチ文化研究所代表 土屋守氏とのBARでの対談という形で・・・
清里フィールドバレエをもっともっと知って欲しいと願い続けていました。そんな思いが通じたのか、朝日新聞が全国版の一面にカラーで、読売新聞も全国版で大きく掲載してくれました。 NHKラジオでも私とのやり取りが全国放送で流れ、全国各地の仲間から、「新聞を見た」、「ラジオを聞いた」との慰労の電話や手紙を貰いました。
私は、来てくださったすべてのお客様が、「この地を訪れて良かった。」と思っていただけるよう、自信が持てる強い受け入れ状態を創りたいのです。 来てみたら、「新聞やテレビで紹介されたのとは違うじゃないか。」では、ダメなのです。
私達は、今まで無理をしてきました。ギリギリの経営もしてきました。小さなことで大きな失敗をすることもありました。 私は、萌木の仲間に言っています。「今を乗り切れば 新しい萌木の村を創れるかもしれない。しかし今が最大の危機でもある。」と 
これからも、多くのメディアで取り上げられる予定ですが「ここで浮かれるなよ」と
 夢だと思っていたことが、夢以上に叶ってしまいました。
今迄、萌木の村、私のことをずっと見守ってきてくださった皆様 どうか私達が気がつかないこと、私達のミス等、厳しくチェックしてください。
失敗がないことが普通
きれいなことが普通
笑顔で感謝することが普通
そんな萌木の村にしたいのです。
 今、私達は変わること 生みの苦しみの時
これを乗り越えれば一皮むけると私は信じています。


[第25回 清里フィールドバレエ メディア掲載・放送結果報告]
 
上次さんの気持ち
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清里フィールドバレエを楽しみにされている皆様へ

強い台風が本州を直撃しております。本日は台風の影響を受ける中で、私達は公演を実施する予定で準備を進めております。しかし、状況は大変に厳しい中に置かれています。

本公演では8月1日、8日と夕方から開演時間まで雨が降り続きましたが、なんとか遅れての開演をすることが出来ました。また、昨日は台風の影響により雨が降ったり止んだりの状況でした。その中で、雨が止んだ時間に開演しましたが、残念ながら途中で休演とさせて頂きました。

皆様の安全の事、ダンサーの想い、心が千々に乱れる想いで天気予報を見ながら対応を考えておりますが、未だ答えを見いだせておりません。
公演するつもりではおりますが・・・・・。    舩木上次
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 8月号

moesuketo.jpg 今年もまたフィールドバレエが始まった。25回目。我ながらよくここまで続いてきたと思う。どうしてここまで続ける事が出来たのだろうか…。
一番はすばらしい仲間がいたからだと思う。地元の大工さんを中心とする仲間。一緒に働いている萌木の村の仲間。シャンブルウエストバレエ団の仲間。そして、私を応援して支え続けてくれた仲間。皆で作り上げたフィールドバレエ。一回一回いつでも全力だった。「より感動する舞台を作ろう」と走り続けた25年だった。
今年は第25回という節目の年。すごい舞台になっている。7月28日から始まりすでに3回の公演を終えたが、毎日が感動だ。文章では伝える事が出来ない。このバレエは五感で感じてもらいたい。特に子供に見てもらいたい。感動する事が多ければ多いほど、人は夢を持つ事が出来る。ポール・ラッシュ先生が言っていた青年の希望や若い人が夢を持つという事がどんなに大事な事か清里に来て、バレエを見て感じて下さい。そして私に声を掛けて下さい。
未来につながる、つなげる為の一回一回の積み重ねに感謝します。
皆さん、ありがとう


追伸 
7月31日発売の「ウィスキーワールド」に萌木の村Bar「パーチ」が紹介されています。ぜひ、ご一読下さい。
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 号外

ウィスキーを通して世の中を見ると ~スーパーマンの独り言~

 3年前までウィスキーの知識がなかった私が一人のバーテンダーと出会い、ホテルにバーができた。地元に白州蒸留所があり、その施設は世界一だ。そんな地元のウィスキーである白州を中心にバリエーションが広がっていった。「素敵なバーを作りたい」と思いサントリーの全商品を取り揃える。次にシングルモルトの多いスコッチ集める。ボウモア(ゴールド・ブラック・ホワイト)、ハイランドパークの40年物、マッカランの各種などを相当集めた。集め始めるとウィスキーの値段が1カ月ごとに、いや、1日ごとに上がり出していることに気がついた。何が起こっているのか?
 日本ではウィスキーは売れない。地方では焼酎やビールが売れ、ウィスキーはほとんど売れないと酒屋さんは言う。だが、限定で販売されているものはあっという間に市場から消える。マルスの3プラス25、白州の25年、響きの30年、山崎の25年、竹鶴の35年。どこを捜しても売り切れだ。昨日まで売っていた物にまでプレミアがつく。そんな中、私は日本のウィスキーの終売品の価値が見直されている事に気がつく。10年前まで日本のウィスキーの評価はスコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダに次ぐ5番目だったようだ。しかし、ここ数年で日本のウィスキーの評価はものすごく高くなっている。そしてその価値がうなぎ登りに上昇している。サントリー、ニッカだけでなく、キリンシーグラム、メルシャン、マルス、イチローズのすべてが物不足になっている。それはインド・中国が経済的成長により日本を抜いてウィスキーの輸入国大国となったからだ。5年ほど前に古酒の買い取り業者が地方の酒屋さんからほとんど古酒を買い占めてしまった。また酒の販売免許が出やすくなってしまった為、酒屋さんは90%と言っていいほど廃業に追い込まれた。そんな状況のなか、奇跡的に私は日本の名酒を入手する事が出来た。

 サントリー【ザ・ウィスキー、インペリアル、エクセレンス、一八九九、プレステージ】  
 ニッカ【キングスランンド、鶴、フォーチュン’80、グランドエイジ、ザブレンド】
 キリンシーグラム【サタデー1・2、エンブレム、クレセント、ロバートブラウン】
 メルシャン【軽井沢25、浅間】、三楽オーシャン【オーシャン、シップボトル】
 マルス各種など

 たくさんの酒屋さんが力を貸してくれた。都会ではまず集める事は難しいと思う。実は都会と地方には大きなギャップがある。都会では日本のこうした古酒にプレミアが付き、発売価格の2倍、3倍、ものによっては5倍もの価値がつく。そしてすぐに市場から消える。しかし、地方ではウィスキー離れが進みほとんど売れなくなった。だから地方の人は価値の減った不良在庫だと思っている。オルゴールでも全く同じ事が言える。オルゴールの情報を持っていない人にとっては、古いオルゴール、まして故障でもしていれば扱いにくいただのゴミでしかない。しかし、コレクターにとっては数百万、数千万する宝物でもある。
 ここのところ田舎、特に私共の住んでいる八ヶ岳はすごい場所だと思うようになってきた。景観もそうだが、水の恵み、森の豊かさ、空気のうまさ、星空の美しさ、四季の移り変わり、夏の過ごしやすさ、野菜の新鮮さ。数え上げれば次から次へとこの地の宝物でいっぱいになる。都会でその一つでも手に入れようと思ったならいったいどのくらいのお金が必要になるだろうか…。
 しかし、残念ながらこの地に住む多くの人達はそんなたくさんの財産を持っている事を認識していない。だからいつも地元の人はその財産を生かしきれず、地元以外の人が大規模な開発を始める。日本のリゾート地で大きな施設・ホテルの経営者はほとんど地元の人ではない。八ヶ岳のホテルにしてもリゾナーレ、大和ロイヤル、ダイヤモンド、海の口八ヶ岳高原などすべてが外からの進出企業だ。知識と戦略が有るか無いかの差だけだ。世の中は考える人の下に考えられない人がつく。価値を決められる人の下に価値を決められない人が従う。ウィスキーも全く同じだ。1993年に2万円で発売されたサントリープレステージ25年というウィスキーがあるが、今は幻の1本だ。市場に出たら数倍の値段になる。そんな幻のウィスキーが地方に眠っている。それも「まさか」というような地方の酒屋さんにあるのだ。私が訪ねた酒屋さんのうち、今年、昨年で店を閉じてしまった人達が何人かいる。店を閉じた時に地域の人たちに古酒をあげたり、飲んだりしたそうだ。多くの人はその古酒の価値を知らずに飲んでしまっているのだ。もったいない。都会では特別な棚に丁寧に説明が書かれ扱われている一本。しかし地方では埃だらけになり、棚の奥で邪魔もののように置かれている一本。価値を知っている人に見つけられれば生かされるのだろうが、知らなければいつか消えていくのでしょう。宝物は大きな酒屋さん、町中の酒屋さん、便利な場所の酒屋さんにはほとんどない。昔からの酒屋さんをしていた限界集落のような「まさか」という所にある。田舎の人は何もないと思うのではなく、地方に住む私達の周りには、たくさんの宝物が山積みになっている事に気がついて欲しい。ウィスキー一つをとってみてもそうなのだから、他の物もまた同じだ。
 私は田舎のウィスキーという宝物を通してホテルの中に素敵なバーを作った。先日、土屋守さんと輿水精一さんがそのバーで対談した。土屋さんは世界で5人の中に入るウィスキー評論家だ。輿水さんは日本のウィスキーを世界レベルに持ち上げたサントリーのチーフブレンダーである。現在、日本のBIG2と言っても過言ではないお二人だ。そんな二人が私共の集めた古いウィスキーを見て感動していた。「どうして?」「どこで集めたのか?」それは私が田舎で育って田舎の宝物を他の人よりほんの少し知っていたからだと思う。そして里山に住む人達、私達はあふれんばかりの宝物に囲まれ、最高の環境があるのだということに気がついてほしい。
(舩木 上次)
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 7月号

  今月末に清里フィールドバレエが幕をあける。私にとっては1月のお正月、4月の年度初めも大事だが、この7月は特別な月になっている。すべてを7月28日の開演に合わせ準備するため、庭づくりや環境づくりは一時中断し、作業道具等を片付け整理した。
 萌木の村の庭づくりと環境づくりはこれからもまだまだ続くが、「確実に変化している」という実感がある。一年、二年、三年と年月を重ね山野草達は大きく育った。八ヶ岳に生息する100種類以上の野草が今、萌木の村の中で元気に育っている。2か所あるパーゴラの根元には山ブドウ、アケビ、マタタビなどのつる性落葉樹が植えられ、来年にはパーゴラの屋根まで伸びて日陰をつくり出すだろう。
 ポール・スミザー氏と出会い、この3年間一緒に庭づくりをして思う事は、彼の考え方で「清里の景観をつくり直したい」ということ。私はこれまで30年以上萌木の村の庭づくりをしてきた。ハーブガーデン、ローズガーデン、キッチンガーデン等々だ。振り返って考えてみると毎年今頃の時期には手入れが追いつかず、美しさよりも荒れた状態となり決して心地のよい環境ではなかった。しかし今は一年一年、そして日一日と美しくなっている。手をかけなくても山野草が自分達で育ってくれる。この彼の考え方を広め、清里駅前の庭も同じように「清里らしく」変えていきたい。ポール・スミザー氏によれば「しっかりした知識のもとやり直せば良くなる」との事だ。そして一番は清泉寮。牧場が目の前に広がるあの場所を萌木の村の石積みのような作業をして山野草ガーデンをつくり、そこから見た富士山が日本一美しく見える環境をつくりたい。
 「美し森」から見る山々の景色は世界一だ。スイスのアルプスの景色にも、アメリカのロッキーの景色にも絶対負けないはずなのだが、今は決してそうは思えない。あの場所に似合わない建物、荒れたままの自然…。世界一の美しさを感じる前に身近の手入れの悪さですべてを台無しにしてしまっている。
 ポール・ラッシュ先生はとにかくキレイ好きだった。私が子供の頃の景観を想い出すと、ランドスケープデザイン、建物と自然の調和、里山の美しさ、ともかく夢のような景色ばかりが思い浮かぶ。そんな美しさを復活させたい。
 私は萌木の村がしていることを多くの皆さまに見てもらいたい。それはまさにコロンブスの卵のように今まで出来ないと思っていた事が出来る瞬間だ。「石を積むこと」「花を植えること」「木を切ること」それらは皆、清里に住んでいる人なら可能な事である。しかし、それだけでは美しい景観は作れない。「センス」や「感性」を持っていることが重要だ。その事をポール・ラッシュ先生は実践してみせた。当時先生の作った「教会と自然との調和」は、先生亡き後に作られたものとまるでセンスが違う。くしくも今は同じ名前のポール氏がこの地にいる。彼はこの地の宝物だ。今は行政も民間も一緒に彼の考えを学び、我々は未来の為に基礎を作る時だ。
 皆様、清里萌木の村に来て、「五感」で感じて下さい。
 自然の中で木や草と人が共に助け合い育っていくという私達のゴールはまだまだ5年、10年、いやもっと先かもしれない…。しかし今、私はスタッフに事ある事に言います。
 「この景観が育つのに負けないよう我々も成長しよう!」と。
そんな中で今年の清里フィールドバレエが始まります。まだまだ未熟者ではありますが、今の私達の全力を尽くします。すべての人が「ここでしか」「この時だから」という感動を手に入れる為に!
上次さんの気持ち
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マンスリー上次さん 号外

 自然流庭づくりで今最も注目されているガーデナー、ポール・スミザーさんによる萌木の村ナチュラルガーデンが3年目を迎えた今年、見事に山野草が力強く育ち始め、美しい庭になってきました。彼の能力のすごさは植物の事を知っている事、樹木の事を知っている事、木や山野草が育っていく未来の姿が予測でき、それに合わせて環境デザインが出来る事、そして何よりも自然を愛している事です。私は今までハーブガーデン、ローズガーデン、キッチンガーデン、イングリッシュガーデン等をずっとやり続けてきましたが、すべて中途半端に終わってしまいました。しかし、ポール・スミザーさんに会い、その哲学と知識と技術のレベルの高さに驚嘆し、これからの萌木の村の景観づくりについて何の迷いもありません。
 私達、作業スタッフは彼の考えている事を具現化する為に、一日一日一歩ずつ作業を続けています。そして、この事から私達は大きな使命を感じるようになりました。今やっている事を地域全体に広げていきたい。もし、私達のやっている事が清里全体に、また八ヶ岳全体に広がっていけば、この地の景観は世界でここだけの景観を作ることができます。
 先人たちが努力して作った物が、世界遺産という大きな財産として、それぞれの場所で宝物になっています。「私達がやっていることが、いつか未来の人達から評価される事」と思うと、今やっている事に大きな充実感が生まれます。萌木の村は、この3年間で1,000トン以上の石を積みました。また、50種類以上の山野草が植えられました。現場責任者の輿水章一さんとスミザーさんの息の合った二人のもとで、私もスタッフも作業を続けてきました。作業が進むたびに萌木の村の改善点が見えてきます。この計画は、ゴールのない永遠の環境作りだと思います。
山野草が美しく繁茂する頃、清里フィールドバレエがいよいよ開幕です。私はこの場所でフィールドバレエを行う意義、ここで行う責任がやっと見えてきました。
 ポール・ラッシュ先生のメッセージ「Do your Best and it must be First Class」
 ハードもソフトも「ここにしかない」「この時だけの」という必然を追い求めて、萌木の村は挑戦していきます。今までとは全く違う、生まれ変わり始めた萌木の村を見に来てください。そして、これからの成長を見守ってください。(舩木 上次)

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上次さんの気持ち
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