マンスリー上次さん 6月号
2011.06.01 Wednesday | moegi

そして、このツアーはまだ終わっていませんが、私はこんなことを感じました。今回の災害で東北の方々は多くの物を失ってしまいました。私達が想像する以上の大きな、たくさんの、重みのある “もの”を失ったのです。一人一人それぞれ違う、それぞれに大切なものです。でも(私はこんな時にこんなことを言うのは不謹慎かもしれませんが)被災された方々はとても大きな物を手に入れていると思うのです。きっと今は気づかないかもしれません。それは見えないものです。思いやり、助け合い、命の大切さ、感謝の気持ち、苦難に立ち向かう力強い心といったものです。そして今世界で一番大切なこと、必要なものがまさにこのような心なのです。このような心が個人の哲学とか価値観を形成するからです。小学校でのバレエ公演は皆明るくて、どこにでもある風景でした。しかし生徒たちは友達や親や兄弟を亡くした子もいました。普通に拍手をして笑顔を見せてくれますが、心の中は尋常ではないはずです。私は思うのです。こんな経験をした子供たちの中から、将来日本を背負って立つリーダーが生まれるのだと。
私たちは戦後、平和ボケして自分の事しか考えず、経済的な物差しでしか考えなくなってしまいました。今回のツアーの中できのみ、きのままで逃げて助かったというおばあちゃんに話を聞きました。一回目の津波が来たときはまだ家は壊されていなかったそうです。「津波は一回では終わらない、二度三度と押し寄せるので絶対海に近づいてはいけない」という昔からの言い伝えがあるそうです。おばあちゃんは津波を恐れて家には近づかなかったのです。でも、その時にお金とか大切なものを取りに家に帰った人は第二波にのまれてしまったそうです。何より大切な物は命であって、お金や物ではないはずです。平和に慣れすぎて命を奪われる危険性を感じ取れなかったのかもしれません。また、住んではいけないと言われた所に経済的にメリットがあるというだけで施設を作り、そして今回の津波ですべてを失ったという場所もありました。我々は今回の災害から多くの事を学ばなくてはいけません。これだけの犠牲を出したわけですから。皆のしてきたことが間違っていたわけですから。
これからの我々は日本人として新しい共通の価値観を持つべきでしょう。ただし、それぞれの地域ならではの価値観を持つべきです。清里にはポール・ラッシュ先生が残してくれた言葉がいっぱいあります。そこにこれから私たちが生きていくうえで重要な考え方が隠されているように思います。ポール・ラッシュ ドリームプロジェクトは6月4日まで続けられ、宮城県、福島県と回っていきます。多くの人と語り、あらゆる方向から物事を見つめられ、そして考え方が決してぶれない人間になる事が、地域に対しても会社に対しても、そして日本に対しても私の責任だと思います。
※私が価値観と頻繁に使いますが、一言でいいますと、一番大切な物から始まります。それは見えるものと見えないものがあります。人生の中で人はそれぞれの時に判断します。YESかNOか、前進かストップか、自分の価値がはっきりしている人は迷いません。迷うという事は相対する考え方がない時に惑うわけです。地域にはその地域内で共通の価値感がなければいけません。日本人には日本人としての共通の価値観がなければならないと思うのです。一人の人間の中には自分としての価値観、家族としての価値観、会社としての価値観、地域としての価値観、日本人としての価値観があります。そしてそれぞれの価値観を感じながら自分の中でバランスをとって物事を判断していくことだと私は考えます。そこには義務も責任もあります。そのことを守った人に自由が権利として与えられるのだと思います。山梨では、と考えると、きれいな水、自然景観、素敵な田舎感という共通の価値観だと思うのです。これらのものを失うことなく、少しずつ進化させていくことが大切なことではないでしょうか。
上次さんの気持ち
- | -
- | -