私達は二つの価値観の中で妥協して生きています。
ひとつは、現在しか通用しない経済的な価値観です。実はそれほど大切なものではないのですが、今の時代はそれが大事だと思い込んでしまっている価値観です。
もうひとつは、過去・現在・未来と時間が違っても、また場所が違っても通用する価値観です。それは不変のもの、不変の考え方で、ある意味理想と言っても良いかもしれません。
ひとつ目の価値観は、物を作り販売したり、お客様のために行動してそこからお金をいただくといった活動から生まれる価値観です。宿泊・飲食・バレエ公演など、値段が付いていてそのお金をもらい、その中から利益を出して生活を支えていかねばなりません。今の世の中はその利益追求とお金そのものが一番大切だと考えられている部分があまりにも多すぎないでしょうか?
ふたつ目の価値観は人間の力を付けるための大切な考え方だと思うのです。お金にはならない物や事の追求が大事だと思うのです。笑顔の接客や優しい思いやりのあるおもてなしです。それがないからといってお客様が支払う代金から引かれるものではありませんが、そのお客様は二度とお越しいただけないですね。
そして、美しさも直接お金にはなりづらい、もう一つの価値です。例えば今私がやっているガーデン作りは、今までに3,000トンの石で石垣を組み、150種類以上1万株の山野草で美しく整備してきましたが、有料ガーデンとしては営業していないので、直接売上にはなりません。また、バレエ公演も「もっとこうしたらお客様が喜ぶステージになる」と思うと追求してしまい、利益にはなかなかつながりません。ひとつ目の価値を中心に考えている経営者からは「順番が違う、まず儲かる事からやるのが普通だ」、「今のおたくの厳しい経営内容から見ると、社長の趣味は後にしてくれ」と言われます。しかし間接的には萌木の村の価値に繋がり、継続してお客様が訪れてくださり、結果的に私たちは今の仕事を持続して行かれるのです。
宗教とか教育とか政治は一般の経済活動とは違い、生産性は問われず理想の人間育成を追求することができる活動です。それらの活動はビジネスになってはいけないものだと思いますが、最近の宗教や教育・政治は少しおかしいと思うのです。人間育成教育よりも、人を使ってどのようにお金を生み出すか、稼ぐことばかりを教えていますので、お金を産みださない企業活動に対しては否定的です。
私は、理想的な経済活動と厳しい現実の中での経済活動はバランスを取りながらやりくりすべきだと考えるのです。人は労働をすると必ずそこには見返りがあります。1日働くと日給8,000円というお金が貰えます。この日給8,000円をどうしたら10,000円にするかということばかりを教えるのではなく、8,000円以外にも信用・技術・人との出会い・やりがい・お客様からの感謝など、お金以外にもたくさん得られるものがあるということを教えるべきなのです。会社はそれらのものも大変重要視するのです。企業の現場でそのようなことを教えるのは指導者の人たちです。ところがその人たちは地位と権力を使って自分のことばかり考えるような社会になってしまいました。「お金が一番大切」という価値観が定着しているからです。
私は生きる力の最大の源は「感動」だと思っています。感動があるから苦しいことにも耐えられる、続けることができる。この世に生まれてきたからにはいくつ感動を手に入れられるかでどれだけ心豊かな人生が送れるか決まってくると思います。また、感動を作りだすことができる人間になりたいと思います。そしてお客様と感動を共有し、お客様から「ありがとう」と言われたらそれが最高の報酬だと思うのです。
ある意味、私の理想は儲けることではなく、それ以外の大きな報酬をいただける会社にすることです。当然、売上・収入は増えた方が良いに決まっていますが、その得られた利益を有効に使い、お客様からお金以外の高い評価をいただくのです。利益の有効な使い道は二つあります。一つは未来に残せる環境整備です。今やっているガーデン作りのようなことです。100年後200年後に「平成の石積み」と言われるようになりたいと思っています。もう一つはスタッフの人間教育と、知識・技術の向上のための投資です。私達に問われているのはお金の手に入れ方ではなく、お金の使い方だと思うのです。お金は使い方によって良薬にも毒にもなります。
萌木の村は理想と現実のバランスを取りながら、その時その時成長した分だけ修正しながら一歩一歩前進していきたいと思います。今の私はよりお金にならない道を選んでいきたいと思うのです。世間ではお金に対する価値観の方が強いわけですから、お金以外の価値観を追求するくらいでちょうどバランスがとれるのではないでしょうか。
■私の、今もっとも気になる人・・・気仙沼ニッティング 御手洗瑞子さん
以前、東京の共同通信社主催の「地宝人ネットワーク」の会合でお会いしましたが、その時から「すごい!」と思っていましたが、やっぱり「すごい!」。
かがり火(発行;合同会社かがり火 発行人;菅原歓一 ☎03-5276-1051 http://www.kagaribi.co.jp)№168 (平成28年4月25日発売)で「被災地に活力を与える創業」で編集されています。是非読んでみてください。
■親ばかニュース
私の息子・舩木城がバレエの振付家をしています。私以上に、誰を目の前にしても自己主張し、自我を通す馬鹿なやつですが、どうも彼の作品が最近高く評価をされてきているようなのです。NBAバレエ団のホームページで見られますので、よろしければご覧ください。http://www.nbaballet.org/performance/2015/sitootome/
第27回清里フィールドバレエでも8/2(火)、3(水)に彼の作品が上演されます。