バレエ、コンサート、食べ物・飲み物、旅行、読書、等々は、物としては残りません。
特に最近思う事は、特に良い物、一流という物はやはりそれなりの価格が必要となる、という事。
ホテルにバーをオープンさせてつくづく思います。一本のウィスキーが千円位から数十万円、中には百万円を越える値段の物もあります。シングル(30cc)という一杯が、原価ですら五万六万にもなります。
そんな高いウィスキーでも飲んで下さる方がいます。お酒を飲めない私は何故そこまでの代金を払って飲むのか聞くと、「一杯のウィスキーが一生の感動として心に残る」と答が返ってきました。
人生はたった一度、私は人生の財産は「感動の量」だと思っているので、共通する事かも知れません。
人はそれぞれ感動する物は違うが、そんな感受性の強い人たちが今、萌木の村には集まっています。
ガーデナーのポール・スミザーさん、木組みの天才・雨宮国広さん、ピアニストの平澤真希さん、成尾亜矢子さん、石積み名人の輿水章一さん、オルガンビルダーの脇田直紀さん、バーテンダーの久保田勇さん、フィールドバレエの舞台を企画する小林雅之さん。
そんな、自分自身で感動出来る物を持っている人たちがここに来て、コラボレーションする事が多くなっています。そしてお互い影響し合い始めています。また、そこから生まれる物が、他では全く無いオリジナルの「萌木の村だけの物」なのです。
一つの例をとると、第24回の『清里フィールドバレエ』。今回のフィールドバレエは今まで23回やってきた野外バレエとは全く違う物になります。"ザ"フィールドバレエ。世界のどこにも無い野外バレエが生まれます。
初めての事というのは、コロンブスの卵のような物で、言葉で説明してもうまくお伝えする事が出来ないかも知れませんが、聞いてください。
私は"ザ"、"ここだけ"を追求する事を昨年から変え続け、スタッフ・バレエ団の皆さんに提案しました。
清里フィールドバレエは23年間、確実に成長して来ました。しかし私は、それでも何かが足りないと思っていました。それは、「野外」と「芸術」という組み合わせを、最大限生かしきれていないのではないかという、自分の中の疑問です。ポール先生がいつも私たちに言っていた"最善を尽くせ、しかも一流であれ" その言葉の意味は何だ?形に残らないフィールドバレエを私自身が、舞台に関わるスタッフが、ダンサーが、そして観ていただける皆さんが、何を宝物として残せるか。
今私たちは、それぞれの役割の中で一つの目標に向かって、第一歩をスタートさせました。
その目指す物は必然【ここだけ】。今私にはその事が見えているのですが、言葉だけではお伝えする事が出来ません。
どうか、今年の夏を楽しみにしていて下さい。
今私たちは見える物と見えない物を一つずつ、一歩一歩、磨き上げています。