「萌木の村は、文化を創るために何ができるか?」
ここ数年の清里が置かれている状況は非常に厳しいものがあります。以前に比べ繁忙期と呼べるシーズンが半減していること。冬の閑散期が正月明けからGW前までと長く、体力的に弱体化しています。売上アップが見込めない現実の中で、現状を乗り切る為に無駄を省き、経費を抑え、何とか今日まで萌木の村を維持してきました。そして今何をしなければいけないのか?何が一番大事なことなのか?と日々考えています。
この度、私たちの萌木の村を舞台に、清里の宝物=オルゴール(萌木の村の宝物は清里の宝物でもあるのです)を活かしたいという力強い協力者があらわれました。ピアニストの成尾亜矢子さんです。昨年のオルゴール館のクリスマスコンサートに出演していただき、私はその内容に非常に感動しました。日本で初めてと言えるでしょう、ピアニストとオルゴールが共演する癒しのプログラムなのです。私は以前から自動演奏楽器と演奏家の生のコラボレーションをどうしてもやりたいと思っていましたが、演奏家の感性(センス)と技術と知識、そしてメンテナンスされたオルゴールの音色が互いに共鳴しあって初めて可能になるプログラムであり、自分自身で「無理なプログラムである」と勝手に限界を決めて諦めていました。しかし、成尾さんのコンサートは私の期待を十分充たしてくれる内容だったのです。そして私は彼女に「清里のオルゴール博物館でしかできないコンサート」の企画を綿密に練ってもらうことをお願いし、彼女は自分自身のコンサートスケジュール以外でその可能性を探ってくださいました。何百年という音楽の歴史に存在し続けた自動演奏楽器と現代の演奏家が共演する夢のコンサートが実現するのです。
人は考えて行動を起こすと運は巡ってくるものです。私のお世話になっている安達原玄仏画美術館館長さんが一人の女性を紹介してくださいました。平澤真希さんです。平澤さんはポーランドへ渡り世界で活躍し、つい先ごろ日本に帰国したばかりの一流ピアニストです。平澤さんも協力をしていただけることになり、心強いかぎりです。
萌木の村を開いた当時、私は清里で何かことを起こす場合、絶対二流はダメだ、と思っていました。「え!?こんな田舎なのにすごい!」と、本物がわかる人に驚きを与えるくらいのことをしなければやる意味がないのです。しかし、バブルがはじけてこの地が衰退していく中で、私は妥協し続けていました。今回のお二人との出会いはそんな私の目を覚まさせてくれたのです。もちろん目標は簡単に達成できるとは思いませんが、私の中ではプログラムを企画・実施することが目標達成の道であると確信に変わってきました。
時を同じく妻・洋子も同じ悩みを持っていました。妻は、東京の牧阿佐美バレエ団でソリストとして、川口ゆり子先生や今村博明先生と同じステージで活躍したダンサーの一人でした。その彼女が教室を開いて30年、機会あるごとに今村・川口両氏の助けを受け、教える生徒たちは大きく育ちました。地方のバレエ教室としては田舎のレベルをはるかに越え、都会のバレエ教室にも決して負けない立派な教室になってきました。教室出身でパリで勉強しフランスのバレエ講師の国家資格を取得した教師も迎え入れました。しかし彼女は、自分の教える生徒たちを一流のバレリーナからも直接指導してもらえるようにもしたいと思うようになってきました。確かに息子・舩木城そしてその妻・高山優が海外から帰国した時には、バレエ教室の生徒たちは現役の世界レベルを感じることが出来ます。しかし、それは一年に1回か2回です。常日頃から世界を意識して練習する環境が生徒たちにとっていかに大事なことか、意識するようになったのです。しかし、妻も私と同じように壁につきあたっていました。一流の先生を清里へお招きする経費は、教室運営を大きく圧迫するのです。「こちらで用意できる数字はとても失礼で言えない、でも何とか来ていただきたい」という葛藤を続けていました。ところが先日、オーストラリアへ帰る息子が「芸術家は夢を追うものだ。本物の芸術家の中には、母の夢に答えてくれる人が必ずいる。」とアドバイスをくれたのです。そして彼女は自分の夢を熱く周りの人に語り、その結果、協力してくださる方が現れたのです。舩木洋子バレエスクールの生徒たちは毎月1週末、日本の舞台で活躍するすばらしい先生方と時を過ごすことが出来るようになりました。
何が大事なのか?ダンサーにしてもピアニストにしても、もちろん技術・知識は一流であるということが大事です。さらに私がもっと大事だと思うことは、その人たちが持ち合わせている”人間力”です。ありがたいことに清里は、この”人間力”を持った人たちがどの時代にも生きてくれているのです。萌木の村の40年の歴史は、この”人間力”を持った人たちとの絆の上に成り立ってきました。萌木の村はこの大切な絆を信じ、初心に帰ります。守りに入らず、一歩一歩前進して行きます。「Do Your Best! And It Must Be Firstclass.」最前を尽くし、一流を目指します。皆様に感動していただけるすばらしい場所作り・時間作りをしていきます。