マンスリー上次さん 2月号
TOPICS | 19.02.01
その1
皆様にご心配をおかけしましたが、清里に2か月ぶりに戻ってきました。ありがとうございました。今日の素晴らしい医療技術により、私の股関節は蘇りました。リハビリと病院生活を終えて帰ってきたら、清里はやはり美しく最高でした。私が入院している最中も、寒さの中でも石積みや庭造りの作業は休まず続けられておりました。毎日清里にいる時は、コツコツ少しずつしか作業が進みませんから、ほとんど変化は感じません。しかし、2か月という時間はそれなりに作業が進んでいて、私にとっては景色が変わって見えました。本当に萌木の村のガーデンはすごい。一歩ずつ作業が進み、一歩ずつ植えられた山野草が育ち、平成の石積みと言われるような歴史が作られたことに自己満足しております。
前にも書きましたが、萌木の村は30年40年前から環境づくりをしてきました。最初はその時その時の思いつきで作業してきました。それなりに作業をしてきましたが、成果が蓄積され、次の年に活かされるという事はなく、毎年毎回やり直しを繰り返してきました。10年前にはデザイナーの方も加わり、大々的に枕木を使って歩道や花壇など環境整備を始めました。計画的にやり始めたことにより、1年、2年、3年とだんだんと形が見えてきました。正直、手間もお金も使いました。このまま進めていこうという時に、一人のデザイナーポール・スミザーさんに出会ったことが私たちの運命を大きく変える出来事になりました。それなりの仕上がりで、一見綺麗に整備されたように見えましたが、その庭には無理があり、特に植えられている植物にとっては健康的ではない状態でした。そんな中、スミザーさんに庭のあるべき姿を具体的に言葉で、そして実際に紙に描いて説明してもらいました。それは、萌木の村だけでなく、清里や八ヶ岳のあるべき姿でした。今までやってきたことは、間違っているなら勇気を持ってやり直そうと思いました。特に今石積みをしてくれている輿水章一さんをはじめとする環境部の方々は、今まで一生懸命整備してきたわけですから、一度出来上がった物を一からやり直すという決断を下すのには勇気がいりました。しかし、私たちはスミザーさんの強い意志・知識・感性に180度方向転換をしました。この環境づくりが見本になり、八ヶ岳地域全体がスミザーさんのような考えの元で景観が作られていけば、きっと世界でも最高の自然豊かな高原リゾートになると思います。
私はスミザーさんとの庭造りによって、ここでしかできない、この時しかできないものに誇りを持って生きられるような「まちづくり」のビジョンを示し始められたのではと思っています。スミザーさんの庭造りをしていて最近思う事は、萌木の村には蝶々が多くなりました。小鳥も増えているように思います。スミザーさんの庭造りは化学肥料や消毒薬を使わないので、地中の中に微生物が多いのだそうです。すべてが元気なのです。人間社会も本当はこうでなければいけないのでしょうね。清里・八ヶ岳のあるべき姿を共有できればこの地に関わる人が夢を持てられるのではないでしょうか。そんなことを考え、感じる今日この頃です。
その2
知識や技術が進み経済的メリットと効率だけを求め、それが正しいと思ってしまうと、そこには大きな落とし穴が待ち受けている。その考え方は、人間の思い上がりだからだ。地球上に生きる生命体すべてにとってバランスが取れていなければ最後にすべてのつけを我々人間が背負うことになる。東京での入院生活で見ていた景色はすべて人工物。人はビルなどの建物の中で守られて快適な生活をしている。しかし、それは我々がペットのように守られて生きているような気がした。都市で生活していると、特に都会に住んでいると、まるでゴージャスなペットの家のようだ。そんな中で生活していると、自然環境が変化していることにあまり気づかないのではないかと思う。私たちのように自然の中で生活していると、20年前30年前と比べると大きく変化している。しかし、我々ですら都会的な思考の影響を受け、少しずつ問題と正面から向き合わなくなっていく。私たちはいつでも自然と向き合い共生していくことを考え続けなければいけないのではと強く思う。100年後、1000年後清里が美しくあり続けるために。