マンスリー上次さん3月号
TOPICS | 19.03.01
萌木の庭が年を追うごとに見事に育ってきている。最初の数年は手をかけているのにあまり変化はなく、私達はガーデナーのポール・スミザーさんの話を信じ、根気よく待ちつづけた。そしてここ2年程、植えられた山野草の力強さを感じるとともに、環境が変わってきていることに気付いた蝶々や昆虫が増えはじめているのだ。そしてその蝶や虫を食べるために小鳥が集まってきている。何故虫が多くなったのかは私達には見えないが、ポール・スミザーさんの庭づくりに答えがある。彼は化学肥料は一切使わない。また、消毒もしない。そのため、地中に微生物が育ち、その力で植物が元気に育つ。小さな虫から小鳥達、そして我々人間までこの萌木の村の自然の中に足を踏み入れると心地良いのだ。
今我々は、庭の変化に合わせて、「萌木の村で仕事をする」とは何なのか考え始めた。ここだけの価値を我々で作ろうとしている。決して楽な道のりではないが、それが私たちの使命だと考えるようになった。しかし、よくよく考えてみると、それは清里の開拓の父ポール・ラッシュ先生の目指していたことと同じではないか。また、我々のホテルの名前になっているヘンリー・D・ソローの森の生活(ウォールデン)の本に書かれている考え方を現代に適応させていることなのではないかと気づいた。
目的と目標は見えてきたが、現実とは相当ギャップがある。その差をいっぺんに近づけようとしても、今の状態では全ての人が受け入れられる訳ではない。人とは一度手にした今までの考え方生き方を変えようとすると拒否反応を起こす。でも、変わらなければ我々の存在意義が問われる。だから一歩づつ進みしかない。目標が見えているのに一歩づつというのはポール・スミザーさんにとっては我慢。私も自分にブレーキをかけながら前に進むことになる。地域も組織もグループもどれだけ同じ価値観を共有できるかが問われている。また、人は同じものを見ても聞いても食べても触れても、一人一人感じ方は違う。一つのことに関して強く感じる人は、そのことを追求しようとするとそれが夢になる。自らそのことが好きになり、誰かと共有しようとすると、その人の存在意義が生まれる。そう考えると、萌木の村の住人達は個性的で独特な力を持った人が多い。星のこと、お酒のこと、野菜のこと、車のこと、ビールのこと、オルゴールのこと、自然のこと、石積みのこと、テディベアのこと、最新のITのこと、縁の下の力持ちの人、ミュージシャンなどなど。その力をどうこの環境の中でハーモニーにして作品を作れるだろうか。現在、IT、AIを使い今までの社会では考えられないことが次から次に起こっている。その中で、”変わってはいけないもの”をしっかりと押さえ、クリエイティブに素敵に変化していく萌木の村でありたい。
先日、はやぶさ(JAXA)が小惑星りゅうぐうに見事にタッチダウンした。このプロジェクトは私たちにとっても大きな感動だった。そんな感動を今年も一つでも多く皆さんと共有していきたいと強く思っている。