マンスリー上次さん3月号

TOPICS | 23.03.01

８７歳になる今でも大きな夢を抱き、新しい教育現場を作り上げたいと情熱を注ぎ込む。
その人の名前は文理佐藤学園の名誉理事長・佐藤英樹さん。山梨県出身のその方は、専門学校に始まり小学校、中学校、高等学校、そして大学まで作り上げた人だ。私は３０年以上のお付き合いをさせていただいているが、いつでも夢を持っていて挑戦し続けている。絶え間なく挑戦する人生を教育に懸けている人である。

教育の原点は「役に立たない人はひとりもいない。いかなる人も何かの役に立つことを銘記すべきである。問題はそれぞれの人が何に役立つかを見つけることにある」という信念のもとに学園を作り上げてきた。ホスピタリティと志ということを柱に、そこから見えるものと見えないものを様々作り続けてきた。私たちの社会は今、AIやテクノロジーロボットによって殺伐とした人間関係で成り立っている。ひとつ会議をとってもリモート会議になり心の通わない関係が増えてきているような気がする。佐藤英樹先生はそれではだめだと思っているようで、人と人の温かさ・やさしさ・他者への奉仕、それらがホスピタリティと考えているようだ。そして方法は違うが、共通する考え方を実践してきた方がもう一人いた。ポール・ラッシュ先生だ。ポール先生が清里でやってきたこと、残してくださったことはまさに、人と人の温かさ・やさしさ・他者への奉仕そのものであった。第二次世界大戦で身も心も経済も荒んだ戦後の地方の立ち直りを指導してくださった。ポール先生の意思に、縁もゆかりもないアメリカのいち市民がわずかずつの志で協調し、貧しい地方の農村・清里は救われた。また、ポール先生のもてなしは、きれいに掃除された施設、季節に咲く野の花、働くスタッフの活気ある笑顔であった。決してお金のかかることではなく、ひとりひとりの志さえあれば達成できる最高のもてなしであった。私はポール・ラッシュ先生と佐藤英樹先生に出会えたことに心から感謝したい。そして私も実践し、そして次の世代に受け継いでいきたい。

先日筑摩書房から「文理佐藤学園という物語」という本が出版された。佐藤英樹先生のことを書いた本である。食い入るように読み、より一層佐藤先生のことを理解することができた。と同時に私自身の甘さを思い知らされた。８７歳で今も夢を追い続ける佐藤先生。７４歳の私はまだまだ餓鬼にしか見えないかもしれない。・・・よし、もう一回がんばるか！

令和５年３月１日

萌木の村村長