マンスリー上次さん 2月号
TOPICS | 18.02.01
清里で育った私は、子供の頃、スポーツ観戦やコンサートを見るという機会はほとんどありませんでした。ただ一度だけ小学校の時、家族で「木村サーカス」を見たことがありました。二度目のサーカスは、今から30年前アメリカ旅行の際「テントを張っておもしろいサーカスをやっていますよ」とホテルのスタッフに勧められて、サンタモニカの海岸へ見に行きました。初めて感じる心のときめき、そして面白さに感動しました。そのサーカスはカナダのケベック州から来ている「シルク・ドゥ・ソレイユ」でした。お客様まで取り込み、会場が感動の嵐になりました。すごい!すごいんです!是非みんなに見せたい!と思い、日本に帰ってきてからこのサーカス団を清里に呼ぶ活動をおこしました。八ヶ岳の麓、美し森のスキー場、当時は「北沢バルブ」が運営していたスキー場です。そのスキー場の責任者と一緒に、そのサーカス団を呼んで夏に1ヶ月の公演をやろうと話を進めました。しかし、残念ながら実現しませんでした。それから7、8年後、そのサーカス団が日本公演を開催すると聞き、横浜アリーナにでかけました。サンタモニカのテント小屋でみたときより、ずっと進化していました。今では毎年日本で公演しています。そしてカナダのケベックはサーカスの街づくりで今や知らない人はいないくらいに有名になりました。「あの時清里公演が実現していれば・・・」と悔しい限りです。
シルク・ドゥ・ソレイユを見た同じ旅行で、ロサンジェルス郊外のハリウッド・ボウルという野外劇場において、オーケストラのクラシックコンサートも聞きました。10万人以上入る大型劇場で、クラシックコンサートなのにポップコーン片手にビールやコーラを飲みながらチャイコフスキーの曲を2時間聴きました。そして最後はステージの奥から大花火がうちあげられました。その時も大変感動しました。その後、オルゴール収集のために20数回、ヨーロッパやアメリカなど多くの国々を訪ね歩きました。コレクターの皆さんは私をもてなすために、必ずと言っていいほど色々なイベントに連れて行ってくださいました。その時の経験が「清里フィールドバレエ」に生かされたのです。
そして最近、ふつふつと新たな夢が芽生え始めています。自分でもその思いを押さえきれません。山梨県では今、小瀬スポーツ公園内にサッカー競技場建設の計画が検討されています。山梨県は80万人の小さな県です。この小さな枠で物事を考えると自ずと限界があります。しかし、山梨県が置かれている条件はと言うと、都市の中の自然豊かなオアシスです。3,000万の都市人口の中で山に囲まれ、まさに砂漠の中のオアシスのように存在しています。東西に中央高速道路が横切り、南北に中部横断自動車道が全線開通間近です。2つの高速道路が交差するところは山梨県のど真ん中。つまり日本のど真ん中です。そこを中心に時間コンパスで円を描くと、1時間半の範囲内に1,000万人の人口が生活しているのです。この条件は日本のどこにもない特別な条件なのです。もしこのような絶好の条件のもと、開けた環境と雄大な富士山を望める場所に、芸術とスポーツの総合施設があったらどうでしょう?!中央高速須玉インターチェンジから韮崎インターチェンジに向かう途中、正面に富士山が見える場所があります。そこに様々な芸術やスポーツやエンターテイメントができる施設があったら・・・、そこでは毎日何が行われるのだろうか?!と考えるとワクワクします。日本が世界の中で生き残っていくためには、物づくりからサービス産業に移行していかなければなりません。外国人旅行者が2,000万人を越え4,000万人の声も聞かれる中で、小さなわが故郷が都市の中で飲み込まれないためには、この地の条件を最大限に生かし日本のどこにもない発想で未来を切り開くしかないのです。清里フィールドバレエにしても山梨と長野の一部のローカルイベントです。世界中からお客様が来てくださるイベントになるまでに28年もかかりました。しかし、1,000万人の人々をターゲットにしたバレエ公演になれば長期のインベント計画が立てられます。
先ごろ1月3日、私は東京ドームに「ライスボウル」というアメリカンフットボールの祭典を見に行ってきました。2時間の試合を見るために早朝に出発して、帰りは夜になります。1時間半の移動距離は決して遠くありません。まして中央高速道路からほぼダイレクトにスポーツイベントや芸術鑑賞の会場に入れるのですから、セキュリティーや準備のことも含め大きなメリットがあります。東京ドームはプロ野球シーズンが終わると各種イベントに貸し出されます。オートバイ、自転車、音楽イベント、時にはダンプで何百台も土を運び込み会場を作ります。その準備のための経費は莫大です。駐車場にしても30分で400円、6時間だと4,800円もかかります。大きな施設をつくりそこにアクセスしようとすると周辺道路だけで大変な時間と経費がかかりますが、道路公団がすべてやってくれています。たとえば10万人規模のロックフェスティバルを計画したとしましょう。さらに2万台の自動車が利用したとします。片道2,500円として往復5,000円×2万台=1億円の高速料金が道路公団に入ることになります。また、そのイベントに参加して富士山、八ヶ岳、山梨の温泉めぐりをするなど新しい商品が次から次へと生まれ進化していくことでしょう。レディー・ガガやマライヤ・キャリーのような世界的なミュージシャンが公演でも企画したら、そのミュージシャンが宿泊するホテルも必要です。何よりそのイベントを通じて山梨という情報が世界中に配信されることになります。80万人の小さな県ということが最大のメリットになります。農産物やフルーツなどを取り扱う素敵な道の駅が会場の中にあったらどうでしょう?!そして山梨の代表的な高付加価値の地場産業品の数々を地元から情報発信できるのです。
この計画は「砂漠にラスベガス」という一大リゾート施設を作った計画と同じです。私は80万人の県民が何らかの関わりでこの事業と結びつき、豊かになれると思うのです。そして何より身近にこのようなことが行われると、子どもたちの可能性が膨らみます。山梨県はバレリーナを志す子どもたちが多いようです。それは「清里フィールドバレエ」を見た親子が「自分も!」と夢をみるからだそうです。ポール・ラッシュ先生が「田舎であっても青年が希望を持って夢を追うことができることが大事だ」と唱えましたが、今の時代、この考えを実現するのがこの計画ではないのかと思われるのです。そしてこれは山梨の将来のことだけではなく、日本の未来の在り方につながる大きな第一歩のような気がするのです。決してこの計画は不可能なことではありません。文章ではすべてを語ることはできませんが、気になった方はご一緒に夢を膨らませましょう。もっともっと質の高い計画に練り上げていきたいのです。
劇団「四季」、宝塚歌劇団、ドラム・タオ、シルク・ド・ソレイユなどが長期公演を行っています。また、オペラ、ミュージカル、バレエなども舞台装置、音響機材等、東京の倉庫では経費がかかりすぎて困っています。地方に倉庫を借りたり作ったりしています。会場の隅に大きな倉庫があったら、芸術活動をしている団体からどんなにか喜ばれることでしょう。また、テレビで放送されているTBSテレビの「SASUKE」なども常設で関わってもらったらいかがでしょう。また、周りの自然の中に林間コースを作っておけば、あらゆるマラソンイベントも企画することができます。もう一度振り返って考えていただきたいことは、FANUC(ファナック)という会社がなぜ山梨県を選んだのかということです。富士山という世界ブランドの膝下だからです。世界一美しい富士山が見える場所こそクリエイティブな商品を生み出す最適な場所だと判断したからです。ディズニーランドを建設するよりお金はかからず、効果はディズニーランドより大きいと考えるのは私だけでしょうか。
山梨県の「リーダー」と言われている人達にお願いがあります。50年後100年後のために今何を考えるのか?!目先のことは我々でも考えられます。どうか“虫の目”ではなく“鳥の目”になって、空の高いところから山梨を考えてほしいと思います。
■あとがき
この計画に実現性があるかないかは、県内の有識者の中で問うても答えは見つからないでしょう。私なら中田英寿氏、坂本龍一氏、エグザイル、企業家ならサントリー、オービック、ファナック、H.I.S、ANAの方々に問うてみるでしょう。また検討委員会を作るとしたら、利権、地域に関わる人は委員に選ばないでしょう。もし私が専門委員会を人選するとしたら、世界の事情を知っていて、現役で世界を舞台に活躍している人・本人に委ねるでしょう。中途半端に知っている人ほど中途半端な提案になるものです。また、“多目的”というほど“無目的”で使える用途が少ないものです。“多目的”という名前を聞いただけで中途半端なものだと私には思えてしまいます。
今日も須玉インターチェンジから上り線で甲府へ向かう途中、美しい富士山の冬景色が楽しめます。四季を通して我々を楽しませてくれると同時に「俺をもっとうまく利用しろし!俺はもっと山梨のために役に立ちたいんだよ」と富士山が言っているように思えて仕方ありません。
※このお話には続きがあります。近日このページにてアップいたしますので
ご注目いただけましたら幸いです。
平成30年2月1日 萌木の村村長 舩木 上次