マンスリー上次さん12月号
TOPICS | 19.12.01
萌木の村の冬を飾るトナカイの歴史
今から30年以上前、自然木を使って清里の町を飾りつけようと考えました。朝日ヶ丘のレストラン「イゾルデ」のオーナーシェフ・義見(よしみ)さんがとっても器用な方で、動物を丸太で作っていました。彼に頼んでワークショップを開いてもらい、みんなで丸太にドリルで穴を開けたり、鉋(かんな)で木を削ったり、多くの手作業でトナカイを作りました。それをまたレザークラフトのお店「メリーマック」の石原清さんが進化させた形にしました。最初はチェーンソー、鉋(かんな)、のこぎり、ノミ、ドライバーなどの道具を使って作りましたが、私が電動丸のこぎりを使って作業効率の良い方法に改良しました。今多く飾られている原型は私が考えました。更に、萌木の村のホテルで働いていた小野和弘さんはワークショップを開き宿泊のお客様と一緒に作っていました。その後それを仕事にして独立、萌木の村の中に「自然木工房ONO」を開店させて人気になりました。
私たちは毎年クリスマスシーズン前に100体以上のトナカイを作ります。そして古いトナカイと入れ替えて新しいトナカイでクリスマスを迎えます。金沢美術大学を卒業して萌木の村の中でフィールドバレエの大道具制作やポスター制作をしている小林雅之さんを中心に、まず山のそうじや木の伐採を考えている人を探し交渉します。了解を得てから木を切り出し製作します。なるべく山に残すことなく運び出します。足や角として使うからです。多くはミズナラの木を使いますが、サルスベリやシラカバなど色々な木を使います。そのため世界に一つだけのトナカイになります。20年くらい前からお世話になっている方々にお声がけし、飾ってくださる場所に運んで行って「萌木の村のトナカイ」として皆様に楽しんでいただいています。
今年も50体以上が清里から東京を始め全国に放牧されます。見かけたら森の匂いをかいだり、生の大木の木肌に触れてみてください。森林浴を楽しんだ後は、インスタグラムで日本中、いや世界中に広めてみんなで楽しいクリスマスを祝ってください。私は今シーズンも時間があけばトナカイを作っています。私の作ったトナカイで一人でも勇気づけられたり楽しんでいただけるのなら、私は喜んで作ります。ただし私の作るトナカイは一体一体すべて違います。材料が「足に使ってくれ!」とか、「横をむかせてくれ!」と語りかけてくるのです。まるで人間がそれぞれ見た目や性格が違うのと同じです。ですから相性がいいものとそうでないものがあります。出会いにひらめきがあります。出会いの時にピンときたトナカイは、まるでガールフレンドやボーイフレンドのような感じだと思います。
ITやAIの時代ですが、私にとってはアナログの考え方や生き方の方がワクワクして楽しいです。なんでもバーチャルで簡単にできてしまう今の社会、それがあたり前にならないことを忘れないでください。もっともっと心をワクワクすることを身近に見つけてください。
どこかで萌木の村のトナカイを見かけたらこの文章を思い出してください。
萌木の村 村長
舩木上次