マンスリー上次さん 6月号
TOPICS | 20.06.01
萌木の村は今大きく変わろうとしています。私がROCKを始めてからもうすぐ50年が経とうとしています。その頃の清里は静かな田園風景、自然と調和した素晴らしい景観でした。そんな清里で最初の洋風な喫茶店だったのです。農業がなりわいだった静かな山村に観光の波が押し寄せ始め、ポール・ラッシュ先生が戦後の農村モデルとして築いた清里農村センターの施設の美しさや牧歌的な風景がメディアに取り上げられ、あっという間に都会からお客様が押し寄せる観光地になりました。すぐに乱開発の波も押し寄せました。地元の農家は土地を売り、牧場はなくなり、別荘や観光施設が乱立し始めました。森も林も里山の山野草も乱開発の犠牲になり失われていきます。それは清里だけではなくて、日本を含む世界が同じように経済性と効率を求め、みんなが突っ走った時代だったのだと思います。そしてそのことに対して「何かおかしい」と思っても、間違いの本質もわからず中途半端な対応をしてきました。看板などの乱立で景観が悪くなったり、自然の中にふつりあいな高い建物ができたり、それでいて身の丈以上に背伸びをして故郷を痛めつけてきました。清里のことを考えていたつもりでしたが、本物ではなかったのだと思うのです。
私はポール・スミザーさんと出会い心を割って話しました。萌木の村をシードバンク(地域のあらゆる種類の植物が揃っていて、さらに希少な植物の種の保存場所も兼ねている)として定め、この地にあった、ここだけの、持続可能な、人にも虫にも微生物にも優しく、植物が生き生きとしている共生の場を作りたいと聞きました。それが結局美しい景観につながり、多くの人に来ていただき見ていただき知ってもらいたいと願っていましたので、仲間として深いお付き合いしてきました。
しかしポール・スミザーさんの考えていることは、私の考えていることよりはるかに大きな地球規模の考えでした。彼は地球の環境を守らなければ地球上の人類が追い詰められると考えているようです。それを救うには人類と地球上の命ある物と共生するシステムを作らなければならないと考えているようです。そしてそのモデルとなる場所のひとつとして、この清里・萌木の村を徹底的に開拓しようと思っているようです。まさに清里開拓の父ポール・ラッシュ先生の言葉 Do your best and it must be firstclass. の環境づくりです。人間とは決して賢い生き物ではありません。欲望に負ける本当に馬鹿な動物です。狩猟時代から今日まで欲望を求めて生きてきました。それでも今日までは許されてきたのかもしれませんが、これ以上やると大きな天罰が降り、取り返しのつかない状況になることを感じている人たちが現れました。そしてそのことを具体的に実践し、そのことを訴えようとしている人がポール・スミザーさんなのです。彼と話をするといつも地球規模です。どんな大きなことも最初はひとり、そして一歩から、誰かが踏み出さなければ前に進みません。私もその考えに協力したいと考えています。しかし今まで生きてきた経験値の中ではそんな考えと真逆のことを一杯してきました。そして今だに正しいことに気づいていないこともたくさんあります。今回のコロナで失う物も多い私たちですが、失って気づいたこともたくさんあります。失っても取り戻せるならまだ夢は未来につなげられます。しかし失ったら取り戻せないことなら、残っている一粒の種から増やすしかありません。今から勉強、自分の間違いを正すと言うことは勇気のいることだと思います。
地球環境は地上も海中もまったなし。その原因は私たちひとりひとりの、小さな間違いの積み重ねでおきた環境破壊です。しかし間違っていると気づいた段階で、逆に環境にプラスに働く小さなことの積み重ねをすることで良い方に転換させたいと思います。萌木の村の庭の石積みはいっぺんにできたわけではありません。毎日毎日9年間もひとつひとつ、大きさも形も違う石を組み合わせて積み続けてきました。その量4,000t。私たちでもここまでできました。私たちのような小さな人間でもできたのです。一緒にやりましょう。