マンスリー上次さん8月号
TOPICS | 20.08.01
31回目の清里フィールドバレエが行われます。今まで30年間、30回毎年毎回いろいろな試練がありました。雨、風、雷、台風、寒さ、虫、自然条件との戦い、経済的な戦い、舞台での問題、団体としての問題、お客様との関係、清里特有の地域の人間関係などなど様々です。バレエ団の皆さんだって数え切れないほどの問題があったと思います。なんと言っても同じことの繰り返しは一度もしてこなかったので、いつもその日その時その場で対応していかなければなりませんでした。一発勝負だったのです。でもそれを続けてこられたのは、そこまでしてでもやる価値があったということ。さらにやり甲斐という大きな感動があったからです。
そして私たちはあらゆる苦難を乗り越えて強くなり、もう何があっても怖いものはない、というくらいの境地でした。“野外でチャイコフスキーの三大バレエを”という大きな企画を立てたのです。昨年から準備を始めそれぞれに準備をすすめていた時、新型コロナウィルスという、だれしも想像したことのない、どう対応していいのか誰にも答えを出せない問題が世界に広がったのです。あとは皆様もご存知の通りです。4月、5月は萌木の村も清里もほぼ自粛で休業状態、存続の危機です。すべての人が同じように悩み苦しんでいたのでしょう。6月に入り天候不純が続き国内では大雨による災害多発、第二波ともいうべき感染の拡大で、世界的にも全国的にもオリンピックを始め様々なスポーツ、芸術活動の中止や延期のニュースばかりです。
7月に入り、私たちもどう進めるか答えを出さなければならない状況になりました。日1日と時間だけは過ぎていきます。今村先生・川口先生に最終決定をしていただくことにして、私は自分の中で葛藤しています。決行・中止どちらからも考えられるのです。今年は中止して楽になりたい、何もやらないということは今の状況の中では許されることでしょう。あの世界一のシルクドソレイユが潰れるこの時代、私は悩みました。ダンサーのこと、スタッフのこと、バレエ団のこと、地元のこと、お客様のこと、特に悩んでいる時には「こんな時にやるのは非常識だ、人の命は何よりも勝る」という、止めるべきという意見があれば、「芸術の芽を摘み取るな、屋外なのだから今こそバレエ界を代表してやって欲しい」という真逆の意見もありました。地域のホテルやペンションの経営者は「バレエをやることで経営を続けられる、コロナより経済活動が止まることの方が怖い」と言います。あらゆることが頭の中を駆け巡りました。今村先生は私とは違うところで同じように苦しんでいると思うのです。人はそれほど違うものではありません。そんなに強くないのです。
そして自分なりに答えを出さなければいけない時がきます。今までの私の人生、挑戦し続けてきました。少しでも可能性があるのなら挑んできたはずです。今回は逃げるのか?!自問自答します。もちろんリスクは目に見えているだけでもたくさんあるし、これから何が起きるのかわからない。そんな時でもだれか私たちを求める人がいて、一緒に夢を追うことができるのであれば、1%でも可能性があるのなら、あきらめずに追及するべきだ。でなければリスクのあることには誰も挑戦しなくなってしまう。今から30年前にドイツに行った時、ドイツの友人から言われた言葉がありました。「冒険家が山に登る、北極点を目指す、ヨットで太平洋を単独渡航する、宇宙船に乗って月に行く、すべて死と隣り合わせだ。しかし、もし彼が死んでも多くの人に夢を与える、冒険家はそれを覚悟して人生を生きている。人間だから100%はないが1%でも可能性があるのならチャレンジする、それが冒険家だ。私もそんな強い冒険家のように生きたい」
そんな思いを今村先生に伝え、先生も答えを出したのです。
私の大好きな尊敬する高梨さんご夫妻からこんな詩を贈られました。
「何かを求め」
人は皆
何かを求めて生きている
何かを求め 旅に出る
人か 自然か どちらかな
何かを求め 清里へ
清里は
四季折々の 顔がある
春・夏・秋・冬 それぞれの
心ときめく 時に遇う
フィールドバレエの里がある
清里に
夢を託した 人がいる
利他の精神 胸に秘め
百年先の 清里を
思い描いて 生きている
人は皆
何かを求めて生きている
何かを求め 旅に出る
人か 自然か どちらかな
何かを求め 清里へ
Do your best and it must be first class.
by Dr.Paul Rusch, the Pioneering Father of Kiyosato
Thank you so much!
高梨和行 和代