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萌木の村マガジン
第34回清里フィールドバレエにただ一人、地元・清里から出演しているスペシャルダンサーがいらっしゃるのをご存じでしょうか?
実は、国内外で活躍する萌木の村の人気者・マリンバ奏者の大森たつしさん(@tatsushiomori)がカバリエール役(執事役)として出演しているのです!凛とした佇まいで、主役のクララをエスコートしたり、王子に剣などを手渡したりする重要な役を担っています。
なんと2014年から毎年清里フィールドバレエに出演されていて、今年で9年目を迎えた大森さん。
音楽家、そして、清里人という立場から、大森さんから見た「清里フィールドバレエ」というものの存在意義や、出演し続けている理由を聞きました。
〝正月よりもこの時期の方が1年のスタートって感じがする。新年でも新年度でもなくて、清里フィールドバレエこそが清里の1年のスタートだなって。〟
―清里フィールドバレエに出演された経緯は?
僕が清里に移住し、萌木の村で定期演奏会を始めたころ、2014年の「白鳥の湖」公演の際に初めてお声がけいただきました。毎年、東京のバレエカンパニーが来て、バレエ公演をしていることは噂程度で知っていましたが、当初はバレエ自体もまったく詳しくなかった。勧められるがまま訳も分からず舞台に立ったのがはじまりでした。
―てっきり幼いころからバレエに親しんでいるのかと思いました!
違うんです!ただ、中学・高校でダンスをやっていて、当時はミュージカル俳優になるのが夢だったので、結果的には音楽家になりましたが、ステージに上がって表現するという意味では繋がっていました。まさか清里に来て音楽もダンスもすべてができるなんて思ってもいなかったので嬉しいですねえ。
―当時はほかにも地元の方が出演されていたと聞きました
僕以外にもたくさんの方が出演されていました。萌木の村のスタッフや地元の大工さん、スポンサーさんなども。今村先生と上次さんが地元の人をあえて使うことで清里の人にバレエを理解してもらい、そして芸術を根付かせようとしていたのだと思います。
―34年間で着実に地元に根付いてきたように思います
舞台を造っている大工さんをはじめ、多くの人が、この清里フィールドバレエを意識して動いているような気がするよね。もちろん準備はとても大変だけど、総合的にはみんな楽しみにしているように思う。僕は、正月よりもこの時期の方が1年のスタートって感じがしている。新年でも、新年度でも、ゴールデンウィークでもなくて、清里フィールドバレエこそが1年のスタートだなって思う。そのくらい大事な存在です。
〝僕にはダンサー自身が音符の一つ一つに見える。楽譜や音楽という目に見えないものが可視化された世界に居るような気がするんです。〟
―舞台に立っていて感じることは?
初めて舞台に立った2014年の「白鳥の湖」、そして今年の「くるみ割り人形」。ともに三大バレエ作品とされるチャイコフスキーの音楽です。どちらも演奏はしたことがあるのですが、バレエを通して改めて思うことが、踊りが入って初めて完成する音楽なんだということ。目には見えない、音符ではないフレーズやメロディーがあって、踊りという身体表現があってやっと出来上がる、そんな感覚を覚えています。
―音楽家・大森さんならではの視点でおもしろいですね!
僕にはダンサー自身がその音符の一つ一つに見えて。楽譜や音楽が可視化された世界の中に入れてもらえているような気がするんだよね。だから、振付とか、手の動きとかがすべて、音符の扱い方に見える。演奏とは表現方法が違うだけで、表現するという意味ではまったく同じだと感じています。
―2017年には舞台上でマリンバを演奏したそうですね
「シンデレラ」公演でマリンバを演奏させてもらいました。本来はバイオリンの演出が入る部分なのですが、今村先生がマリンバを提案してくださいました。古典を大切にされる今村先生なので僕としては驚きの提案だったのですが、先生に伺ってみたら、「そもそも野外でバレエをやっていること自体おかしいんだから」と笑ってらっしゃって、お茶目な一面に触れたような気がしました。
〝僕はお客さんと同じ目線のバレエのファンであって、清里のファンであって、シャンブルのファンであって、フィールドバレエのファン。そして、誰よりも特等席でそれを味わっている。そのポジションでしか見えない景色を伝える伝道師のような役割を果たしたい。〟
―2014年から9年間も出演されると思っていましたか?
全然思わなかったです!必ずしも立ち役はあるものではないので、最初は「白鳥の湖」だけだと思っていたのですが、毎年出演させていただくことになりました。いよいよ役も付き始めるようになり、踊りではないにしても、セリフのある動きも任せてもらえるように。素人にもそんな風に任せてくれるところが今村先生のチャーミングなところだなと思います。
―来年は清里フィールドバレエ35周年、そして大森さんが出演すれば連続10周年ですね!
毎年欠かさずに35年、本当に素晴らしいことですね。いわゆる劇場の中でのバレエは、踊り、お衣裳、曲、ダンサーの技術が合わさった総合芸術ですが、清里はそこにさらにプラスされる要素があるんだと思います。それは、自然だったり、人だったり…どれ一つも欠けてはならないものだと思っています。
それから、9年出演を続ける中で、ダンサーたちとの交流も深まり、ドラマのようなものが見えるようになってきました。やっぱり清里フィールドバレエは、人がつくっているものであって、その人の奥にある成長というドラマが生まれる場所なんですよね。私生活も含めて、その人の成長みたいなものを生ものとして強く感じるようになりました。
―最後に。唯一残る〝清里組〟としてどのような役割をしていきたいと考えていますか?
すべてのダンサーやスタッフにそれぞれの立場による役割があると思います。僕の場合はたぶん、お客さんと同じ目線のバレエのファンであって、清里のファンであって、シャンブルのファンであって、フィールドバレエのファンである。そして、誰よりも特等席でそれを味わっています。そのポジションでしか見えない景色を伝えていくこと、伝道師のような役割を果たせたらいいなと思っています。
同時に、マリンバ奏者として、バレエを通して作曲家の作品の深みを理解し、それを自分の演奏にもつなげていく、人がつくる本物を伝えていくことだと思っています。清里フィールドバレエがどれだけ素晴らしいかということを一人でも多くの方に知ってもらいたい!来年は35周年、僕もできる限りのことをしていきたいと思います。
―ありがとうございました!
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大森さんのインタビュー、いかがでしたでしょうか?音楽家・清里組ならではの視点で語られた清里フィールドバレエ考!新しい知見を得たようで新鮮な気持ちになりました。ダンサーの、スタッフの、そしてお客様の、それぞれの胸にある清里フィールドバレエの形に触れてみたいと思いました。
そして、今回大森さんも初めて知ったそうですが、地元の大工さんや萌木の村スタッフを舞台に出演させていたのは、舩木上次。
ヨーロッパでは地方公演の際に、その土地の市長や議員、スポンサーを舞台に出させることがよくあるそう。地元の人を出すことによって、市民に芸術への理解と親しみを広げていく、知っている顔があるとユーモアも感じる、そのような気持ちで声を掛けていたのだそう!
かつてと比べ、バレエ団も成熟し、なかなか地元の人が出演することは少なくなってしまいましたが、現在も違う形で清里とフィールドバレエの深い関係は続いています。
本日からの後半でも大森さんの出演がございます!さてどこで出られているでしょうか?最近では、「大森さんを探しましたが、どこに出ているかわからない!」という嬉しい言葉を聞くくらい、すっかり作品に溶け込んでいる大森さん。
みなさんぜひ大森さんにご注目くださいね!
◎PROFILE◎
大森たつし【マリンバ・パーカッション奏者】
マリンバ、パーカッション奏者としてクラシックの古典作品から現代音楽・ ポップスまで、絶妙な音楽的洞察力と表現力の高さが高く評価されている。200回を超える海外公演の他、テレビ出演、ラジオ番組のパーソナリティー、様々なCD・ CM・映画音楽のレコーディング に参加、SEKAI NO OWARI・槇原敬之・元ちとせ・スキマスイッチ・山崎まさよし、KinKi Kids等のミュージシャンのサポート等、活動範囲を広げている。
official website : https://www.tatsushiomori.com/profile-1/
YouTube: 「大森たつしチャンネル」:
https://www.youtube.com/channel/UCAy0h6UvTEfBtkNeo3FGspA/videos
公式Instagram:
https://www.instagram.com/tatsushiomori/?hl=ja
文責 萌木の村広報室