Magazine

萌木の村マガジン

マンスリー上次さん 2025.2月号

2025

Feb

01

社長コラム

今から60余年前に(1961年に)発刊された「主婦の友」の記事が、100歳になる母の書棚から発見された。当時の清里開拓の歴史が取材されている。当時の清里の人たちは、皆希望に満ちている。今と比べたらはるかに物は無い、仕事はきつい、“ブラック”な状況なのに、みんな笑顔だ。それに比べ、今回のフジテレビの会見での人々の苛立ちはいったい何なんだろうと思った。私の知っている開拓の人々と、今を生きる人たちは同じ日本人だが、まるで別人だ。

実は私たち萌木の村は、ポール・スミザーさん指導のもと、庭づくりを12年続けてきた。気がつけば私が子供の頃の清里のどこにでもあった景色が再現されている。そして私はここ一年農業の勉強会に参加していて、それらのことが頭の中でグシャグシャに詰め込まれている状態だ。そして、何かを感じ始めているような気がする。萌木の村の庭はミミズが増えた、大雨が降っても土が流れ出たりしない、つまり、保水力が増した、芽吹きからやたら元気だ、蝶がいっぱい飛んでいる、その幼虫を食べる野鳥も増えた、色々な現象を確認できた。そして、この一年に及ぶ農業の勉強会で教えてもらった結果、萌木の村の庭づくりでやってきたことが、理論的に少しだが、わかってきたように思う。地球の生物は全て太陽のエネルギーによって生かされていることを知った。

地球上の生き物は、微生物と植物と動物がそれぞれ生きるために互いの餌となり循環するシステムができている。それぞれが健康的で互いにとって良い餌でなければいけないのだ。しかし現代は、様々な手法で編み出された化学物質により、土を痛めつけ、土壌生物を痛めつけ、その結果我々は健康を損ねている。それは肉体だけではなく精神も蝕まれている。健全な肉体に健全な精神が宿ると言われている。

そう考えると、ここのところの世界情勢や、フジテレビ会見をはじめとする日本の出来事は、我々を取り巻く循環システムを犠牲にして、人間のためだけ、お金のためだけ、自分のためだけの考え方をしてきた“しっぺがえし”のような気がするのだ。今の人々は不安と苛立ちが増していて、周りに対して攻撃的になり、争いあって最後には互いに傷つけ合う恐れがある。

かつてネズミによる実験が行われた。健全な餌を食べて育ったネズミの群れと不健全な餌を与えられたネズミの群れの違いを試した実験である。身体に悪い餌を食べて育ったネズミたちは攻撃的になり、しまいには共食いをするに至ったそう。今の世界の人々は不健全な餌を食べて育ったネズミの群れに似ているような気がする。我々も地球の生命体のひとつであることを自覚して謙虚にならなければいけない。我々人間は、間違いに気付いたら、その段階からやり直すことのできる理性を備えた生命体ではないか。萌木の村のガーデンは12年間をかけて多くの大切な物を取り戻した一例だと思う。

農業の勉強会では議論が飛び交っている。医学者、原子物理学者、生物学者、宇宙工学者が専門知識をぶつけ合っている。今の常識を正しいと思わず、本当に正しいことをみんなで探し続ければ、地道ではあるが、真実に向かい前進していかれるのではないだろうか。

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