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萌木の村マガジン
私たちがやっていることで100年後に役立つこと、100年後の人たちに喜ばれるものは何だろうかと考えた。
我々萌木の村が11年に渡ってコツコツと積み上げた石積みはきっと100年後も残るだろう。私と友人の輿水さん、そして若い深澤君を中心に仲間たちと積んだ石の量は3,000t。ほとんどが清里、野辺山、富士見、原村など、八ヶ岳の石たちだ。今、その計画も完成間近である。萌木の村の風景は、この石積みとポール・スミザーさんデザインによるナチュラルガーデンで見事に生まれ変わった。
ポールさんのナチュラルガーデンは無農薬・無化学肥料だ。虫や昆虫が生息することで、野鳥がさえずり蝶が飛び交う自然な庭になった。また土はほとんど耕さない。バーク堆肥と自家製落ち葉堆肥を上に施していく。植物の根の育成と微生物の繁殖を促す。だから肥料を与えずとも元気な植物に育つ。野鳥や虫たちも生き生きと暮らす自然本来の姿に近づいた庭はすぐにはできなかった。10年という時間をかけて手に入れた健康な庭である。
そして天然石の石積みは傾斜地を有効利用し、しかも美しく見せる。しかし天然石はひとつとして同じ形のものはないために、電動ドリルで穴を開け、くさびを打って形を整える。失敗したら別の石で最初からやり直す。萌木の村のシーズンオフにあたる冬の季節が石積みのシーズンである。半割のドラム缶に薪を燃やしてストーブにし、作業の途中に暖をとりながら厳寒期の作業を続ける。厳しい寒さの中の作業だが私たちは楽しくて仕方ない。ひとつの現場が完成するごとに大きな満足感が得られた。この感動はなんなんだろう?!経済性と効率を求める時代感に逆行した平成・令和の石積みだ。
この石積みは10年後に苔が生え、石垣の隙間には植物が根を張り昆虫や野鳥が巣を作り様々な生き物のすみかになるはずだ。現在広場の花壇とバレエ舞台の基礎となる工事をしている。舞台周辺も見事に整備されるので楽しみにしていてほしい。そして100年後を想像してみてほしい。
私と輿水さんは今年ついに後期高齢者である。私は100年後、天国からこの石積みを見て満足げに微笑んでいると思う。
萌木の村村長