Magazine
萌木の村マガジン
清里は急に寒くなりました。短い秋を通り越して、初冬へと変わり始めました。木の葉が落ち、その木の葉を掃除して集め野積みにします。すると微生物がその葉っぱを食べ、増殖し発酵させます。それが自然に戻り、木や山野草のエネルギーに変わっていくのです。本当に自然とはうまくできていますね。
そこに人間が関わるとおかしなことが起こってしまいます。昔は小さな”変なこと”だったのですが、今は大きな”変なこと”になるから厄介です。
私たちのように清里の自然の中で生活していると、自然から学ぶことばかりです。旅は学びです。萌木の村に来てください。自然の中で何を感じてください。
先日、こんな文章を書きました。読んでください。
「ナチュラルガーデンへの経緯とその意義」
萌木の村のナチュラルガーデンを散策すると、私が子供の頃の美しい清里の原風景が懐かしく思い起こされます。物質的には決して豊かではなかったけれど、数々の美しい楽しかった思い出と共に。
清里に当たり前にあった豊かな自然は、当たり前がゆえに価値があるとは気づきませんでした。そして、高度経済成長期・清里ブームを生き抜き、便利さや効率、物質的な豊かさを追求していく中で、草原や林緑を美しく彩っていた野草の姿が激減しました。
1990年代、日本にガーデニングブームが起こると、雑誌でもてはやされていた”バラ園”や”ハーブガーデン”こそが庭づくりだと思い取り組んでいきました。どの庭も完成時はよかったのですが、高原の厳しい自然環境の中では枯れてしまう植物が多く、維持していくのが難しい。そこで、また別の庭を造る。
そんなことを30年も繰り返していました。良かれと思って土を耕し、枕木を並べ、肥料をやり、消毒をして…それが小さな生き物たち、そして土壌の生き物や微生物にダメージを与えていたのに気づいたのは、ずっと後のことでした。
人は人との関わりの中で生きています。しかし、よく考えると地球上のあらゆる命とも関わり、共に支え合って生きています。科学や技術の発展で、もっと幸福になると私たちは錯覚していました。そんなことを気づかせてくれたポール・スミザーさん指導のもと、新しい庭づくりが10年前に始まりました。そして今では、萌木の村全体がガーデンとして楽しんでいただけるまでになりました。
ポール・スミザーさんは、風土や環境条件に合う植物や材料を基本に、完全無農薬で人にも自然生態系にも優しい、持続可能な庭づくりを徹底して行っています。ホテル前の「八ヶ岳メドウガーデン」は、八ヶ岳原産の貴重な野草が咲き乱れ、お客さまを楽しませると同時に、野草を絶やさないためのシードバンクとしての働きも担っています。
土は優しく植物を育み、虫たちが、そして蝶たちが舞い、小鳥がさえずり、新しい命を生み育てています。全ての生き物にとって最高の場所。それは同時に、人間にとっても最高の癒しの場所となっているのです。
そんな環境の中で仕事ができる私たちは、これからどう生きるべきなのか?私たちは新しい挑戦を始め、ポール・ラッシュ先生が夢見た未来を目指して、開拓者2世として新しい時代を切り開いていこうと思っています。
萌木の村村長